激ダサDANCEで凍らせて

ハロプロとテニミュとその他雑記。

ミュージカル『GREASE』

ミュージカル『GREASE』大阪公演を観てきました。

お嬢様が夏休みの浜辺でヤンキーと恋に落ち、ひと夏の恋と思っていたら転入先の高校で再開してお嬢様と不良たちがドタバタするコメディです。

本当は1公演だけ観るつもりが予想外に楽しくて、終演後すぐ窓口に行って翌日のチケットを追加で買いました。

新歌舞伎座は1階席の傾斜が緩いし上階も視野が無なのでかなり嫌い寄りの劇場だったのですが、リピーター割の割引率がすごくお得で窓口の方も快く希望の席を手配してくれたので好感度が上がりました。新歌舞伎座は無料会員でも最速のチケット抽選に申し込めたりと、チケット確保に関しては良い劇場だなと思います。

どの席でもめちゃめちゃ観にくいんですけどね!

なんで普段追いチケをあまりしない私が割引価格とはいえ安くはないチケットを衝動的に追加で買ってしまったかというと、フィナーレからカテコにかけての流れが超アゲで最高だったのが一番の原因です。

元々私がGREASEのチケを取ってたのは元アンジュルムの芽実ちゃんとテニミュOBの三浦さん、内海さん、神里さんが出演していたのに惹かれたからで、ほぼキャスト目当ての亡霊オタク的感情で観劇に赴いたのですが、GREASEのフィナーレは最近の現場で感じることが少なくなっていた「現場、超楽しくてめちゃアゲ」な感情を久しぶりに与えてくれました。

ここ数年アンジュルムの現場でもテニミュの現場でも、客席のオタクにコールしろとか手動かせとかなにかさせることって難しくなってしまっていて(とはいえ私はテニミュ新参だし今はアンジュ現場にもほぼ行けていないので「ここ数年」とか語れる立場ではないです)、私もきらきら輝くアイドルや若俳の姿をオペラグラス越しに静かに追い続けて幸せになるのが今の現場なんだと思って通っていました。できるのはせいぜい座ってサイリウムをゆらゆら揺らすくらいで。うちわとか持てる界隈ならまだオタクっぽい行為ができるのかもしれないけどハロやテニミュにそういう文化は無いですし。

そのような状況の中、超アゲでハッピーな曲で締めくくるGREASEのフィナーレでは客席のみんなも一緒に踊ってって言ってくれて、久しぶりにオタク的はしゃぎ方が許されて、それがすっごくすっごく嬉しくて楽しかったです。オタクをするってこういうことなんだって思い出しました。

ただ、一緒に踊れる振り付けが複雑気味なうえに説明一切なしで、主演のダニーに「動画で覚えてきたよな?」と無茶振りされ、そういうのに慣れてるアンジュやテニミュ3rdのオタクはともかく新歌舞伎座常連のおじいおばあがYouTubeで振り付け暗記してから来場するわけなくないか?って笑っちゃったんですけど実際私の視界の範囲では踊ってる人少なかったです。でも私的には短い演出の一部分でもすっごく嬉しかった。

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何が嬉しいって、最後の振り付けが演者は客席に向けて、観客はステージに向けてハートを送れるようになってるってことです。

本当に一瞬ですけど、ステージの上から希望とかきらめきとかたくさんのものを届けてくれたキャストに向けてオタクが合法的にハートをズキュンと飛ばすことが許されるってよく考えたらすごくレアなことだと思います。しかも演者は男女半々で観客も男女比や年齢層が極端に偏っている現場ではなかったので、なんとなく健全なハートな気がして恥ずかしさも薄れます。

心の中で全力でめいめい~♡みうみう~♡キャスト陣みんな~♡だいすきだよー!!!ありがとうー!!!って叫びながらハートを飛ばしてました。

最後のバウも音楽と観客の手拍子に合わせてキャストが順に踊りながら出てきてくれて、あー!テニミュの楽しいやつ―!って思いました。フィナーレからカテコが楽しいとその流れで追いチケしてしまうということです。

 

最初にフィナーレ超楽しかった話を書いてしまったんですけど、もちろん幕開きからずっと楽しくて、音楽と歌唱、振り付けとダンス、衣装の色彩、お芝居、全部が世界観を盛り上げていて良かったです。

あと演劇女子部と2.5次元(どちらもだいたい演者が主でストーリーが従という逆転が起きている)が観劇体験の根っこにある私としては、グランドミュージカルにしては珍しくメインキャストにほぼ平等に見せ場やソロが割り振られていて、キャラクターの個性が明確に打ち出されているのが嬉しかったです。

普通、グラミュはアイドルや若俳(広義のアイドル)をよく見せるためではなく深い一本のストーリーを見せるために脚本・演出が作られているので主役以外の人物にいちいちスポットライトを当ててストーリーをごちゃつかせることは無いのですが、GREASEは男女5人ずつのメインキャストそれぞれの見せ場が目まぐるしく回ってきて常に誰かが歌ってるような舞台なので中だるみが一切ないし連続で観劇してもこのシーン飽きたな……みたいなことが起こらないです。

その代わりダニーとサンディ、主役カップル二人の感情の変化の掘り下げにはそこまで時間が割かれず、準主役のリッゾの生理が止まり妊娠疑惑が掛かるという重い話が浮上してもやっぱパンツに血ついてたわの一言で問題が解決して早とちりでした良かったねとなるので、最初から最後までストーリーがアホなくらい軽いです。その軽さがGREASEの武器であり、その異常なテンポの良さがかえって大好きなのですが。

すれ違うダニーとサンディが最後にきちんと結ばれる経緯もかなりぶっとんでて唐突さと意外性にびっくりしました。不良のダニーと品行方正お嬢様のサンディが迎えるラストって、素直になったダニーがサンディに誠意のこもった愛を伝えて結ばれ、皆の祝福を受けるのが物語のお決まりとして妥当だろうと思っていたのですが、膝下丈のかわいいワンピースを着て髪をリボンで結っていたサンディが何の前触れもなく急に黒いぴちぴちの服を着たイケてる姉さんに変身し、ダニーを夢中にさせてラブラブになるというまさかのラストだったので、この世には舞台上にヤンキーが増えることで問題が解決し大団円を迎えるミュージカルが存在しているんだなと思いました。

この作品はブロードウェイ原作で、1950年代のアメリカを舞台にしているので現代の日本とは「ヤンキー観」が全く違うと思うのですが、たぶん未成年飲酒・喫煙、暴走行為等にマイナスイメージがそこまでない世界の話なはずなのでそう考えるとサンディがイケてる姉さんに変身して事が収まったのも不思議ではない気がします。

 

ちょうど今年の秋に同じ新歌舞伎座で同じく芽実ちゃんが出演していて、そして同じく欧米の高校のプロムを主題にした『ジェイミー』を観たばかりだったのですが、『GREASE』には『ジェイミー』のような深いメッセージ性も社会や観客に対する問題提起のようなものもないと思います。

GREASEは不真面目に生きてる不良たちがしょーもないことで悩んだり、将来について真剣に迷ったりする様子をそのまま描いていて、小さな出来事をありのままやってるだけだからこそ一人一人のキャラクターがしょーもないながらもリアルに一生懸命生きてるということの魅力が伝わってきました。

そして50年代アメリカのアゲな「ヤンキー観」を踏襲しながらも日本的な感覚の笑いを上手く組み込むことで、客席から自然な笑いが起きていたのも本作の楽しいポイントでした。序盤でダニーが関西弁でキレ散らかすところは完全に三重県人の三浦さんの素が出ていたり(本人もアドリブ芸やりながら自分で笑っちゃってたし)、ドゥーディーが股間に煙草を隠したりダニーが股間に煙草の箱入れながらランニングしてたりするシーンはいちいち下ネタがしょーもなさ過ぎて何回観ても笑えました。

特に男性陣は過去に共演して仲が良い人達も多く、ギャグシーンで素の表情が出がちだったのでそこが上手く日本人的笑いに繋がったんじゃないかと思います。逆に女性陣のコメディシーンは典型的な欧米の毒舌ジョークという感じで、客席の笑いを取ろうとしている様な演者の素は見えないのですが、奔放な男性陣と比してきちんとバランスが取れていて、お洒落な海外映画の雰囲気を感じられました。

 

他にも面白かったシーンとか書きたい事がたくさんあるんですけど、一周回って「すごく楽しかった」という一言に尽きます。めいめいの歌唱シーンは圧巻、みうみうのダンスシーンも優勝、他のキャスト陣もみんなキャラクターのかっこいいところ、アホなところをしっかり見せてくれて、たった数時間しか観てないのに皆が愛おしいと思いました。

オタクとして現場に行くことが超楽しいって気持ちを思い出すことができて、こんないい舞台を生で観れたのが幸せだなと思います。たのしかったー!