激ダサDANCEで凍らせて

ハロプロとテニミュとその他雑記。

宙組シャーロック・ホームズ/Delicieux!

宝塚歌劇団宙組シャーロック・ホームズ/Delicieux!を観てきました。

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シャーロック・ホームズ

私はシャーロック・ホームズの原作を一切読んだことがなく、19世紀イギリスに関する知識が『黒執事』から得た知識しかなかったのですが、まったく問題なく楽しめました。オタクで良かったです。

宝塚版シャーロック・ホームズは犯行シーンからお芝居が始まるので私のような推理小説に慣れていない人間でもストーリーが追えるようになっており、公式HPの作品解説にも記されている通り推理よりもホームズ周辺の人間関係の方がメインに据えられています。

新参なりに最近気づいたのですが、宝塚のお話って何を題材にしても男性主人公とその恋人、ライバル、男友達との関係性に焦点を当てた脚本になるんですね。公演ポスターも男性2人と女性1人がメインになっているのが綺麗な様式美だと思います。

トップコンビのホームズとアイリーンはとても華があって、破天荒でキザっぽい男性とファムファタール的な女性の恋愛はこれぞ宝塚というエッセンスを見せてもらっている気持ちになりました。お二人とも自信に満ちた表情と苦しみを抱えた表情のギャップを見せるのが上手で、特に目の演技が素晴らしかったです。

始めて観劇した時は宝塚のメイクはちょっと没個性的だなと思っていましたが(単に私が人の顔覚えられないというのもある)、宝塚メイクは流し目や伏し目、誰かを見つめたり睨みつけたりする表情がはっきりわかるので、少し慣れてくると逆にジェンヌさんの個性が明確に感じられるような気がします。

作中に登場するもう一組のカップル、ワトスンとメアリーはトップコンビとは対照的に穏やかで愛情深いカップルとして描かれていて、ワトスンのスマートさとメアリーの可愛らしさに癒されました。メアリーのワトスンに向けた笑顔や傷ついたアイリーンに声を掛ける優しい表情はすごく印象に残っています。

 

敵サイドは、魅力的な悪役モリアーティに4人の個性豊かな幹部がゲームのラスボスと四天王みたいで、オタクが喜びそうな布陣で来るじゃないの…と思いました。1+4の布陣は並んだ時の絵面が強そうだし、ダンスのフォーメーションも舞台映えするのでかっこよかったです。

四天王(?)の一人であるフレッドはただでさえ最初から襟足が長くて眼鏡をかけた暗号解読の天才という女オタクの好きな要素欲張りセットだったのに途中でホームズ側のスパイということが発覚して、ここまで「要素」を詰められると術中にハマったみたいで悔しいなと思いましたが、一目見た瞬間から好きすぎて双眼鏡でずっとストーカーしてしまいました。

 

全体的な感想を言うと、コメディシーンとシリアスシーン、恋愛シーンと日常シーンがバランスよく構成されているのでミュージカルとしてすごく楽しかったです。

個人的に今まで男役さんがフロックコートや和服を着ている時代のお芝居しか見たことがなく、スーツ姿の男役さんがたくさん出てくるお芝居は初めてだったので、宝塚特有のダンディなスーツの着こなしや男性的な仕草を堪能できたのも良かったです。女性をエスコートする時の立ち振る舞いなど、ときめきを感じました。

室内で拳銃をぶっ放すホームズや新世界の神になろうとしちゃってるモリアーティも、やってることは滅茶苦茶ながらスーツの着こなしや立ち振る舞いは美しく洗練されているのが流石宝塚って感じで、良いです。

 

Delicieux!

宝塚大劇場の公演は前半が休憩なしでお芝居、長めの休憩を挟んで後半に華やかなショーという構成がメンタルに優しいなとつくづく感じています。

私は一般的なミュージカル作品で1幕と2幕の間に休憩が挟まって長蛇のお手洗い列に並ぶと急に現実に引き戻された感があり嫌なのですが(お手洗い行くどころか、客電が付くだけで割と興ざめ)、宝塚はお芝居がブツ切れになって休憩が入ることがないので世界観に浸りやすいです。そして後半にハッピーなショーがあると前半のお芝居が完全なハッピーエンドでなくても超ハッピーな感じで帰路に就けます。

今回、お芝居のラストでホームズとアイリーンは愛情で結ばれたものの、ホームズとワトスンの友情は寂しい終わり方をしてしまったので、ホームズ役の真風さんとワトスン役の桜木さんがショーで同じ舞台を踏んでいるのを見ると再会できて良かったね~という気持ちになりました。ショーのテーマは毎回お芝居の内容とは無関係なので、勝手にそう想像しているだけなのですが。

 

Delicieux!は私の少ない宝塚観劇経験の中では一番クセがすごいショーでした。

観客がマカロンのペンライトを振る場面があって、アイドル現場みたいな空気になったり(これ開演前まで存在を知らなかったのですが、みんなあの一曲以外使い道なさそうな特殊な形のペンライト買っててすごい)、お菓子の国のような甘い世界観が続くと思いきや中盤ではコメディシーンや耽美で怪しげな場面が入ってきたり、綺麗にまとまっているというよりはハチャメチャな楽しさがありました。

特にくるみ割り人形メドレーのカンカンはチャイコフスキーの音楽の背後でずっと女の子たちの黄色い笑い声が聞こえるようなアレンジがされていて、振り付けも楽しく、違法薬物を吸わされているのかと思うほど多幸感がありました。

このショーはパリを舞台に色々な時代や文化の音楽や衣装が織り交ぜられているのですが、全体的な印象としてはロココの時代の空気を一番強く感じます。

「マーカーロンで♪筋トレ♪」って歌いながらマカロンダンベルで筋トレしてる貴族とかちょっと正気じゃないと思うんですけど、享楽的でおバカで明るいロココの時代を宝塚風のトンチキで表現していて良いなと思いました(余談ですが、ロココ=お馬鹿っていう私の歴史観は映画版『下妻物語』の影響が大きいです)。

あと、お芝居の前のお披露目で凛とした袴姿で登場した107期生が、ショーでは大きな3段のケーキに乗って登場したのがすっごく可愛かったです。

大人のお姉さんから初々しい女の子まで大人数の舞台で、賑やかで楽しかったです。私もここでしか使い道なさそうなマカロンのペンライト振っておけばよかったかな。

 

長いおまけ 誰かを推したい 

私はヅカオタを名乗れるほど宝塚に熱を上げているわけでもなく、最近ゆるーく好きになりはじめた新参ファンなのですが、未だジェンヌさんの顔と名前を全く覚えられず、推し(宝塚風に言うとご贔屓)ができる気配がありません。

本業の推し事はアイドル舞台と2.5次元舞台なので歌やダンスが上手いジェンヌさんを教えてもらってもみんな異次元に上手く感じてしまい、誰が誰だかわからない状態になっています。

そうは言ってもやっぱりご贔屓ができた方が楽しめるだろうなと思い、舞台で気になった人のお名前をチェックしておこうと思っていたのですが、またもやアイドルと2.5のオタクゆえの壁にぶちあたりました。

"煌びやかなトップコンビもすごく魅力的だけど、キラキラしすぎてないジェンヌさんを推したい問題"です。

今までいろんなジャンルのオタクをやってきた中で、私は主人公やライバルキャラを推したことが一度もなく、準準主役くらいの大人しくて落ち着いたポジションの人を好きになりがちでした。なのでもし宝塚でご贔屓ができるとしたら3~5番手くらいの人を好きになるんだと思います。

でも3~5番手くらいの人ってその人がギラついていないわけじゃなくて役柄的にギラついてないだけなんですよね(最近見た役だと今回のフレッドとワトスン&メアリー、桜嵐記の正時&百合が好きでした)。いずれ順調に出世すれば、控えめな魅力ある役を演じていたジェンヌさんもデカい羽を背負って銀橋を歩くようになるわけです。

このブログ読んでくれてるのはテニモンが多いと思うのでテニミュで例えると、柳蓮二や日吉若役のキャストさんがある日突然ラメまみれの幸村精市跡部景吾になるかもしれないということです(この例えほんとに適切か?)。

もちろん自分のご贔屓がトップへ昇格していくのは無上の喜びだと思うのですが、"陰のオタク"は微妙に困惑しています。

私が普段通っている現場は、アイドル舞台なら基本的に当て書きで脚本が書かれており、2.5次元舞台なら実力の単純な上下でなく本人の内面とキャラクターが合っているかで配役が決まるので、静かなタイプの演者はだいたい舞台でも静かな役を演じることになり、ある程度本人と舞台上の役を一貫的に推せるようになっています。

でも宝塚って基本的に舞台上では全員が"陽"側、少なくとも最終到達点はデカイ羽を背負った"陽"側で、落ち着いたお芝居に惹かれてもそれはその公演だけのものなんですよね。演者と役が密接すぎるジャンルを推してる私にとってはご贔屓を探す難易度が高いです。

 

当分は宝塚の舞台が全体的にぼんやり好きという観劇スタイルになる気がします。

そうやって観ているうちに運命の瞬間が来て、誰かに夢中になることがあったらいいな。