激ダサDANCEで凍らせて

ハロプロとテニミュとその他雑記。

ミュージカル『新テニスの王子様』The First Stage

2021年1月6日、跡部王国建国記念日という特別な日に人生で初めてテニミュを観てきた。

日頃の行いが良かったのか、この半年間まだ観ぬテニミュのことを四六時中考えて生きてきた執念が形になったのか、TSC先行でとんでもない良席を引き当てた。

ちなみに建国記念日テニミュのチケを取ったのも先日のクリスマスイブに原画展のチケを取ったのも偶然その日が空いていたからであり、私が特別ロマンチストなわけではない。初観劇の日が建国記念日に当たることは前日に気づいた。

 

テニミュを観るにあたって、私は当日までに原作の記憶を可能な限り脳内から消した。

Twitterやブログでミュージカルのネタバレを踏まないようにおたくのレポを遮断したのはもちろん、新テニミュの上演発表時から原作を封印して読まないようにしていた。

2.5次元演劇で原作を封印するのは本末転倒なようにも思えるが、それにはちゃんと理由がある。

試合の展開が読めない舞台を観ることでテニミュのコンセプトに近い「テニスの試合を観戦しにきている応援団」の気分、つまり劇場ではなく観戦席にいる人間の気分を味わえるのではないかと思ったのである。10年ぶりとなるテニミュ完全新作をなるべく新鮮な驚きとともに観たいという気持ちも強かった。

私は立海氷帝を箱推ししてDVDを飽きるほど観ているので、その二校と対戦する公演は勝敗はもちろん、どの技が試合の流れを変えてあの台詞をきっかけにこのキャラの心構えが変わって、みたいな些細なところまで覚えてしまい、応援団気分は薄くなっていた。もちろんテニミュは試合結果がわかってても毎回感情が揺さぶられるし、すごく面白いけど。

だが初めての新テニミュは記憶を消して観に行ったので新鮮なハラハラ感があった。どう試合が展開していくのかわからない時も多々あったし、予想外の台詞も多かったし、あのドキドキは最初で最後の経験だったと思う。記憶消して良かった。

 

初観劇の日、憧れのメルパルクホールの座席に座り、あの軋むテニスシューズの音と真っ直ぐすぎるスマッシュの音が聞こえてきた時は感極まって泣きそうになった。テニミュ、本当にこの世に存在してたんだ。本当に今から目の前に生身の王子様が現れるんだ。誰が登場するんだろう。やっぱり最初だからリョーマかな?

 

そんな興奮の中、ついに緞帳が上がる。

いや、誰?????

 

テニミュ初観劇で最初に見た2.5次元存在、アメリカの地下鉄の乗客でした。ほんまに誰やねん。

でもまあその直後にちゃんとリョーマ出てきます。

 

今までDVDでテニミュファンをしていた私が一番感動したのは、舞台の奥行きがちゃんとあること。フェイスシールドが必要なほど近い席で観ていたので、自分の席から舞台の一番手前までの距離より舞台の一番手前から一番奥までの距離の方が長かった。

目の前にキャラクターが確かに存在している臨場感がすごくて、舞台奥から手前に役者さんが歩いてるとウワー!王子様がこっちに来るー!って感覚だった。

奥行きは単に物理的なものだけではなくて、前方席に座っていると照明の光が舞台から客席まで伸びてきたり、氷帝コールが客席後方から聞こえてきたりといった要素にも立体感を感じた。劇場空間って素晴らしい。

 

書き忘れていたが、当初大阪公演は1回しか入らない予定だったものの初観劇の後感情が溢れてしまったので一旦原作をしっかり読み込んで後日当日券でもう1回観た。なのでこのレポは2回分の観劇の感想が混在しています。

 

合宿所のシーンではコーチ陣の合宿へようこそ〜みたいな歌から始まる。新テニミュという新しい世界へようこそと言われてるみたいで観ているこっちもワクワクした。

ここの三船コーチの歌が桁違いに上手すぎて嘘やろ…ってなった。一人だけ声量がおかしい。

三船コーチはこの後も要所要所で異常な歌唱力を披露してくれて一瞬でファンになってしまったんだけど、これが原作の三船かと言われれば違うなとも思った。原作では最初コーチとして登場した三船がだいぶ後になって実は日本代表の監督でしたーと明かされるのだが、テニミュの三船は登場した瞬間から圧倒的監督。

これまでのテニミュにおいて声量が大きくて良く響く歌声というのは部内における威厳やテニスの実力を表すものとして機能してきていて(歴代の手塚、跡部、真田の2/3トリオの歌声が典型)、強そうな声=自分にも他人にも厳しい男の証だった。野生動物の群れのボスの話みたいになってしまったが、あながち間違いでもないと思う。

従来の2.5次元ミュージカルは単純な歌の上手さより、歌声がキャラの内面を示していることの方が重視されてきた。ノムタクや岳人のような小さくて可愛いキャラがバケモン歌唱力でビブラートを響かせてたらミュージカルとしては正解でも2.5次元ミュージカルとしては不正解なのである。

そういう意味で、原作で放尿シーンが描かれたアル中のおっさんの歌が他のキャストと比べて圧倒的に上手いという事実に「新」テニミュの革命を感じた。

従来の2.5次元ミュージカルのルールに沿うならば、三船は汚ねえ声のおっさんが適役だったはずである。それでも三船役に岸さんを起用したのは、チケ代9,500円の新テニミュ2.5次元の常識を覆そうとしていることの表れであるはずだ。

 

これは完全に余談だが、キャラの格好をする時は常に体毛を綺麗に処理しなければならない"テニミュコード"はコーチ陣にも適用されているようである。三船は脇も足首もしっかりツルツルだった。舞台上の三船は上品な威厳と清潔感に満ちている。虚構としての汚いおっさん、三船。

 

コーチ陣の歌唱の後には中学生の自己紹介ソングが続く。この自己紹介ソロパート聴くとテニミュだなぁって感じがしたし、赤也パートで曲調が変わるのは3rd関立M1の《勝つことが使命》を彷彿とさせる構成で嬉しかった。前田さんの赤也は舞台の空気を変えるのがすごく上手い。赤也は主人公でも部長でもないけど、特別なライバルキャラとしての格を感じた。

 

公演のメインは中学生+鬼の5番コートvs高校生の3番コートの対決になるのだが、それに入る前に桃城vs鬼、リョーマvs徳川、金太郎vs鬼の試合も描かれる。

小野さん演じる徳川さんは背がすらっと高くてお顔がとても綺麗。世界一白ジャージが似合っていた。

1回目は席が舞台に近すぎて視線がキャストさんの足元と同じくらいの高さだったので徳川の股下が2mくらいあるように感じた。デカ過ぎんだろ…

今まで映像でテニミュを観ていて、私はどちらかと言えば人間のかっこよさより音楽やダンス、舞台の構成に興味が向いていたのだが、小野さんの徳川さんを見て初めてイケメンそのものに心を動かされる感覚がわかった気がした。

 

金ちゃんと鬼の試合は金ちゃんがハムスターみたいにちょこまかしててすごく可愛かった。どっしり構えた鬼と縦横無尽に舞台を駆け回る金ちゃんの対比が面白いので、これは1回目よりも2回目に少し下がった席から全体像を観た時の方が楽しさがわかった。

 

それから負け組と勝ち組のシーンが始まる(この辺の構成うろ覚えです)。

負け組キャラクターの一部はテニミュボーイズの方が演じていて、推しキャラの柳さんが出てきた時はすごくびっくりした。まだ舞台上に存在する柳さんに会う心の準備ができていなかったのに。

テニミュボーイズが演じるキャラはスポットライトが当てられず極力目立たないようにされているのだが、どのキャラも派手な演技はしていないのに佇まいや体格がそっくりで、プロの仕事を感じた。

適当に柳さんっぽい人立たせとくかーみたいなノリで柳さんのコスプレをした人が舞台に出てきたら私はキレていたと思うが、柳さん役の方は何もしていないのに柳さんだった。ありがとうございます。

柳さん役の方は細身でスタイルが良いし佇まいが綺麗。基本的に目を閉じているので表情の作り方は3rdの井澤さんに近いかな。2幕では三船の「革命だ〜」みたいな歌詞に合わせて開眼しててかっこよかった。

 

柳さんと赤也の同士討ちは見れないものだと思っていたので予想外に見れて感動。ただ、柳さんの「更なる高みに登ってこい」という台詞は削られていた。

この台詞は柳さんのプライドの高さや自分の実力に対する自負と全国大会で後輩に破滅的な試合をさせてしまったことへの後ろめたさが絡み合って出てきた名台詞だと思っているので削られたのは悲しい。

でもテニミュボーイズが演じるキャラクターは存在感や意思を極力抑えられているからしょうがないことだとも思う。脇役としての柳さんが強い意志と期待のこもった台詞を言うと、存在感が出過ぎてしまう。

テニミュボーイズの中では物語の都合上真田と柳が一番喋ってるけど、幸村はまったく喋らない。きっと幸村という圧倒的な存在は少し目立っただけでメインキャストの存在を食ってしまうからだろう。

原作では多くの中学生が登場する負け組のシーンを舞台で抜粋するにあたり、宍戸さんや謙也といったクセのない素直な少年漫画らしいキャラクター数人だけが選ばれているのもそういう配慮なのだと思う。

 

勝ち組側のシーンは、サーキットトレーニングのステップを踏みながら舞台を横切るシーンがめちゃくちゃかっこいい。2人ずつで皆出てくるのだが、前田プロのキレが一番良かった。

私は好きな男のタイプが「走るのが早い男子」なので、サーキットトレーニングをしてる勝ち組と同じくらい鷲に追いかけられて全力疾走する負け組にもときめいた。テニスの特訓のため鷲に追いかけられてるシチュエーションなんて意味不明なのに。特に真田の走ってる姿はかっこよかった。

 

そして何やかんやでコート入替戦にシーンが移る。

S3とD1は歌唱なしで控えめの描写。中河内先輩がロボットダンスしながら歌ったりしたら面白そうだし、「落とし前前」や「しましまって」なんていかにも歌詞にしやすそうなのに中河内曲が無いのは残念だった。リョーマや金ちゃんがいる負け組側に時間を割かないといけないのでメリハリのためにもロボットダンスを入れる余裕は無かったのかもしれない。

 

S3の試合中に中河内がクラウザーのボールを避けた時赤也が「避けられちまった!」と言いながら悔しそうにしてるのが面白すぎて無理だった。原作でも面白かったけど声で聞くと余計にすごい台詞。旧テニはまだかろうじてテニスの試合はポイントを獲ったら勝ちという常識が通用してたけど、新テニはKO負けが当たり前の世界なのでこの赤也の台詞を聞くと新しい世界への扉を開いちまった感がすごい。

 

次のD2、白石・赤也vs都・松平ペアの試合は一番楽しみでもあり、一番観るのが怖かった試合でもあった。

全国立海D2の夢を永遠に見ている私は柳さん不在のテニミュで天使になった赤也を受け入れられるのか不安を感じていたのである。

赤也の天使化はペアプリで許斐先生が「やりすぎましたね(笑)」と話しているくらいのぶっとびネタなので、テニミュ史上屈指のシリアスな展開である全国立海での悪魔化した赤也との落差が激しい(悪魔化をギャグとして捉えているファンも多いとは思う。でも私は歴代の立海の圧倒的歌唱力で歌われる《赤いデビル》をギャグとして捉えることはできない)。

新テニは軽率に人間が吹き飛ばされるし、選手生命が危ないぞ!みたいな展開は旧テニから何度も繰り返されているけど、命が危ないと明言されているのは赤也の悪魔化くらいだ。

切原赤也とは作中随一のギャグキャラでありシリアスキャラなのである。

 

舞台で観るD2は原作以上に感情がめちゃくちゃになった。面白すぎるのに、その背景に勝利に執着する立海や柳さんの感情がチラついて素直に笑えない。でも面白すぎる。

まず白石のオサムちゃん約束破ってごめんみたいな歌がめっちゃしんみりしてて意味不明だった。秘密で人と人は繋がるとかこれは大人になる為に必要とか(うろ覚え)歌ってるけどオサムちゃんはそんな重い気持ちでガントレット預けてないと思う。1回目はシリアスな曲調にどう反応していいか戸惑ったけど2回目はこれシュールギャグとして笑っていいやつだなって気付いてマスクの下でニヤニヤしながら聴いた。

テニミュ日替わりの白石にありがちなマジレッサーでおもんない白石が本編の曲にまで進出してきて、オサムちゃんの幻影含め「マジレスで笑わせにきて、それに誰もつっこまない」のがまさにテニプリ世界観という感じがする。

そのマジでやってるからこそ面白い演出は松平のおもしろサーブもそう。松平はいったんジャンプして膝を開いて深くしゃがんで着地するカエルみたいなモーションからサーブを打つのだが、飛んだ勢いでそのまましゃがんでるのに一切身体の軸がブレてなくて、世界一無駄な体幹の使い方だなと思った。

 

白石と赤也のデュエットは明るい曲。笑顔で歌う前田さんは見慣れない感じがして新鮮だったし、ダンスも新鮮だった。3rdの赤也曲はダンスのステップよりもポーズや仕草でこいつヤベー奴だ!って感じを表現することが多かったのでその印象が強かったが、この曲はコミカルな動きも入れつつしっかり踊る。

でも楽しい曲のはずなのにどこかにつらい気持ちがあった。赤也が白石にケツアタックしながらずっと前からのパートナーみたい♪って歌ってるのを見たらあの地獄みたいな全国決勝のD2と柳さんの決断は何だったんだって思ってしまう。

 

デビル&エクスタシーの歌詞で赤也と白石は完全に対等な関係になっていて、柳と赤也のような猛獣使いと悪魔の関係とは違う。

私は原作を読んで柳と赤也の関係性は歪んでいて白石と赤也の関係性は健全という捉え方をしていたけど、白石と赤也のデュエットを聴いて本当は個人がどうこうじゃなくて強豪校の名を背負う重圧から解放されたことがテニスの楽しさ(健全さ)に繋がっているんだと思った。

全国準決勝で青学に勝つため財前に非情な指示を出した白石も、柳ほどではないにしても後輩につらくあたる立場だったと思う。

今回の新テニミュは各校の部長が部員と離れて集まっているが、勝利のために集団を率いる立場を離れた彼らは中学生らしい純粋な成長への希求を取り戻した気がするし、負けたらここで終わりというプレッシャーから解放されている分どのキャラクターも自由に振る舞っているように見えた。

 

いろんな感情がグルグルして初回はつらい気持ちと楽しい気持ち半々でD2を観ていたのだが、2回目はオサムちゃんごめんねソングが実はギャグということに気づき、更に最後の挨拶で普段通りのジャージの着こなしで出てきた赤也が立ち止まってファスナー全締めからの柳さんポーズをしてから前に出てきてお辞儀してるのを見てしまったので感情が全部吹っ飛んだ。

 

D2の後は高校生と三船が重々しい歌を歌って休憩。この終わり方は立海公演っぽくてすごく良かった。関立の《非情のテニス》とか全立の《三連覇に死角なし》の後に緞帳降りてきてうわ絶対勝てねーー!ってなるやつをずっと生で観たかったのでこういう終わり方を観れて興奮した。初見時、曲の終わりになんかすげーバカでかい音が鳴り響いてて、これなんの楽器だろうって思ってたら奥から口開けた三船が歩いてきて「え!?これ人間の声だったの???」ってびっくりした。凄すぎて2回目でもまた同じところで驚いた。

 

2幕は手塚vs大和のS2からスタート。

手塚がすごく楽しそう。今までの手塚に比べて重々しさとか鋭さが無い気がした。天衣無縫になるという舞台上での出来事のせいでもあると思うけど、キャラとしてもキャストとしても青学を背負っていないからこその自由でもあると思う(これはさっきの白石の話とも被る)。

テニミュで各校の部長役を演じるキャストさんは役として部長を務めるだけではなく稽古でも舞台挨拶でもリーダーとしての振る舞いを求められるけど、新テニミュではどうだったんだろう。青学OBである大和と対戦する手塚は歌声も若々しくて、高音がすごく綺麗だった。

今回の手塚は試合以外でもなんだか可愛くて、不在だった立海の3年生(赤也の保護者)の代わりに赤也の態度を諌めたり、原作の柳生の代わりにクラウザーの言葉を通訳してあげたりしてて微笑ましかった。

 

橘・千歳vs鈴木・松尾のD1はかなりあっさりめ。先述した通り初日は記憶を消してから観劇したので鈴木惷くんがどんなキャラクターかも怪しい状態で観ちゃったんだけど、アクロバットも容姿も綺麗ですごく刺さった。かっこいい。

D1のラリービートからシームレスに場面が崖の上のスポーツマン狩りに移る演出は高揚感があってよかった。3rdルドルフのD1とD2のシーンが交ざる演出とか比嘉公演の青学vs比嘉の途中で立海の試合が交ざる演出の疾走感が好きなのでこの演出は今後もたくさん取り入れてほしい。

 

最後の跡部vs入江のS1は公演の中で一番感動した。

正直ここまではかっこいいより面白いの方が勝っていた。全国優勝を目指して戦い、もし負けたらここで夏が終わってしまう旧テニに比べると新テニ合宿編はどうしても青春の一度きりの緊迫感が薄れるし、そもそも新テニはなんでもアリのテニヌ漫画だから新テニミュでも緊張感のある試合を見るのは難しいかもしれないと思ってた。

歌唱が無いS3やD1の試合よりも崖登ったり鷲に追いかけられる負け組の方がインパクトあったくらいだし(負け組には主人公のリョーマがいるから仕方ない)、新テニミュは新感覚テニヌミュージカルだと思って観ていた。

 

でもさすが跡部様は違いました。跡部vs入江の試合の緊迫感、盛り上がり、楽しさ、何もかもが最高で、これこそ私がこの半年ずっと憧れていたテニミュの圧と熱気だと感じた。

試合中に計3曲あったからかなり尺も長かったと思うけど一瞬だった。

 

高橋さん演じる跡部はすごくジャンプが高くて迫力がある。跡部王国を建国するに相応しい跡部様だった。

跡部が歌とダンスで舞台を支配し雪を降らせる建国シーンはベンチも面白くて、赤也は上向きながら口開けて雪食ってた。隣のクラウザーの肩トントンってしてお前も食えよ(?)みたいなやり取りしてたけどスルーされてて可愛い。

 

跡部王国の歌はめちゃくちゃ楽しかった。開放感のある曲調とバックのお城も相まってなんとなくディズニーのミュージカル映画っぽい。早くドリライで建国を祝いたいな。跡部といえば大人っぽくて落ち着いた曲のイメージだったけどこの曲でガラリと印象が変わった。

樺地氷帝のバックダンサーがいなくて跡部様大丈夫なの?と思っていたがちゃんと中学生メンバーが階段の上に君臨するキングを祭り上げている。鬼先輩も後ろで踊り狂って建国を盛り上げてて、初回は鬼先輩の狂喜乱舞に目を奪われて肝心の跡部様を見逃してしまったので2回目はちゃんと見た。

ちなみに建国シーンに手塚はいない。全国立海での《神の子〜デッドエンド》に真田が不在なのもそうなんだけど、幸村や跡部のような絶対的存在であっても理解者でありライバルである真田や手塚はそれを祭り上げるようなことをせずちゃんと別件で席を外してるのがテニミュほんとにわかってるなって思う。

跡部王国のスポットライトはキングを照らすにふさわしい華やかな演出で、建国シーンは本当に劇場映え&ミュージカル映えして楽しかった。

もちろん跡部だけでなく入江先輩も名演で、二人のデュエットは聴きごたえがあった。

 

このS1は原作とミュージカルではだいぶ印象が違うというか、漫画にしかできないことと、ミュージカルにしかできないことがはっきりわかる。

見開きのアップを使って建国の瞬間の表情を切り取ったり、跡部王国に「キングダム」というふりがなをつけるのは漫画だからこそできる表現で、ミュージカルは漫画の一瞬のインパクトには敵わない。

特に新テニはネット上で有名な特大インパクトのシーン(磔になった中河内とか、デュークホームランとか)が頻出するが、それを舞台でやるとどうしても衝撃がなあなあに流れてしまう。

 

でも生身の肉体の躍動というのはミュージカルだけが持つ特権で、舞台の上を駆け回る跡部と入江を観ているとインサイトポーズで建国する瞬間とか入江の骨格が透ける瞬間みたいな一瞬の衝撃を強調しなくても見せ場を作れるのだと感じた。

 

最後は鬼先輩がモブをあっさり倒して5番コートが勝利。テニミュ史上はじめてライバル校が笑顔のまま挨拶しているのは新鮮で嬉しかった。

特に前田さんは関立と全立後編合わせたら100回くらい負けを味わってただろうし、立海の選手の笑顔ってすごく幸せだ。

 

試合後は負け組が帰ってきてコーチ陣、高校生、中学生が順にかっこいい歌を歌ってみんな出てきて終了。

黒ジャージ柳さんと眼帯真田の登場に正気を失ってしまったので物語がどう終わったのか記憶が曖昧。

最後のメドレーは圧巻だった。

中学生が歌ってる途中で台の上であぐらをかいた三船が下手の袖からすーって出てくるのめっちゃシュールで面白いのにみんな真剣に歌ってて全然笑うシーンじゃないからつらかった。これ白石のオサムちゃんごめんね曲の次に笑えます。

 

アンコール曲はなし。客降りせずに舞台上で何か歌ってくれるのかなと思ってたけどお辞儀しておわりでした。最後の曲が重々しかったので楽しいアンコ曲で雰囲気を壊さず終われる方がいいのかもしれない。これまでのテニミュはライバル校が負けちゃったけど前を見て頑張ろうね!みたいな曲歌って大団円だったけど、新テニミュの高校生は負けても圧倒的に強そうな曲で終わる。そもそも徳川と鬼は負けてないし。

高校生みんな物理的にデカイし、演じているキャストさんの年齢やキャリアも中学生組より上で、舞台に堂々と立っている姿が本当にかっこよかった。

チケットを申し込んだ時は中学生目当てだったけど、まさかここまでコーチ陣や高校生に夢中になると思ってなくて、テニミュがますます好きになった。

なんならテニミュだけじゃなくて、「新テニもまあ好きだけど、旧テニの熱さに比べたらあれはシュールギャグ漫画だしな…」というテニプリ全体に対する認識すらも変わった。

 

この状況の中、夢にまで見ていたテニミュを観劇できて本当に良かったです。

感動のあまり、気づいたら9000字を超える感想を書いてました。人生で初めてのテニミュ観劇を一生忘れないと思います。

 

テニミュ、最高。