激ダサDANCEで凍らせて

ハロプロとテニミュとその他雑記。

クリスマスイブの夜にテニプリ原画展行ったら会場独り占めできました

大阪に巡回してきた「テニスの王子様大原画展 〜連載20周年記念全国ツアー〜」に行ってきました。

普段油彩画や日本画の美術展覧会にはよく行くものの漫画の原画展に行くのは初めてだったのでちゃんと楽しめるか不安な気持ちもありましたが、いざ行ってみると予想以上に楽しかったです。

私がわざわざ展覧会に絵画作品を観に行く最も大きな理由はマチエール(絵の具の盛り上がりなどの質感)や実物でしかわからないスケール感、色彩を感じるためなのですが、漫画の生原稿って白黒だしそもそも印刷された状態が一番美しくなるように描かれているし、観ても楽しくないのでは?という思い込みがあって今まで原画展をスルーしていました。でも今回原画展鑑賞デビューを果たして原画の見所や楽しみ方みたいなのがなんとなくわかった気がするので感想などを書いていきます。

(そうは言うものの、今回一人で観ていてこれ絶対おたく友達と一緒に来た方が楽しいじゃんって思ったのでたぶん友達とわーわー言いながら王子様を愛でる楽しみ方には勝てないと思います)

 

個人的に面白かったポイントを箇条書きすると主に

①細かい線の描き込みやホワイト・墨の表現

②切り貼りの跡

③修正の跡

の3点です。

 

①細かい線の描き込みやホワイト・墨の表現

これは原画展を観る前から思っていたのですが、許斐先生って不二くんの作画にやたら力入れてませんか?他のキャラと比べても不二くんの作画は絶対崩れないし常に麗しい。特に髪の毛がなびく表現など、改めて原画をじっくり見ると本当に綺麗だなと思いました。迷いなくひかれた躍動感あふれる線は観ていて感動します。

細かい毛の表現は印刷だと潰れちゃうことが多いのですが、みぢゅき♡(観月はじめくんのことです)のまつ毛は下描き段階だとこんなに繊細なんだなという発見があったのも嬉しかったです。

 

そして、原画を生で見て一番迫力を感じたのはホワイトを散らす表現や墨のかすれの表現です。無我の境地やシンクロ、真田の黒色のオーラなどいわゆるテニヌ的表現は許斐先生もかなりこだわって描いているようで、白黒のバランスや線の密度など見どころが多いと思いました。

 

②切り貼りの跡

原画展が初めてなのでそもそも漫画の原稿を見るのも初めてだったのですが、漫画のアナログ原稿ってこんなに切り貼りされて作られているんだなと驚きました。

各校ユニフォームのロゴをいちいち描かずに上から別の紙を貼り付けていたのは新たな発見でしたし、観客のモブや細かい背景なども紙の切り貼りで対応していることがわかりました。

綺麗な完成系のための切り貼りもあれば、作業の効率化のための切り貼りもあり、絵を全く描かない私が観ても面白かったので二次創作などをしているおたくが観たら更に面白いんだろうなと思います。

 

③修正の跡

①のホワイトの使い方や②の紙の切り貼りの痕跡が見えるおかげで途中で修正した箇所もわかったのが今回の原画展で一番面白かったです。

 

例えば手塚vs樺地戦で樺地が「勝つのは氷帝です!!」と叫ぶシーンは台詞のフォントサイズの修正の跡が見えます。原画では樺地の台詞の下にひとまわり小さいフォントサイズの同じ台詞が透けて見えており、普段は無口な樺地の熱意を強調するにはフォントの大きさが足りないと思い直して上から紙を貼り直したという試行錯誤の過程を想像することができます。

また、乾・海堂vs柳・切原戦で悪魔化した赤也を見る観客モブの口元が5人くらい一斉にホワイトで修正され、全員口を開けて恐れ慄くような表情になっているのも許斐先生の意図がわかりやすい修正だと思います。最初に描いた観客は息を呑むように口を閉じていたけど赤也の獰猛さがきちんと伝わらないと判断して口元を修正したのだろうか、などと想像が膨らみました。

 

このように樺地の台詞のフォントサイズや赤也を見るモブの表情の修正には必然性を感じられたのですが、疑問が残る修正もありました。

353話の手塚vs真田戦で「向こうに入らんかーっ!!」と叫ぶ真田の見開きアップのページがあるのですが、そこで元々描かれていた真田の左肩の立海のロゴがホワイトで消されているのは何故なのか、色々考えてみましたが私の中で未だに答えが出ていません。帰宅して単行本を確認したところやっぱり左肩だけロゴが消えていたのでなんらかの意図があって後から消されたことは明白なのですが、なぜあるはずのロゴを右肩だけに描き左肩だけ消したのかは不明です。

おそらく真田の表情と背景の縦線を強調して迫力を出すために無駄な要素は省略したのだと思いますが、許斐先生にはわかる何かしらのバランス感覚というかこだわりをこの原画から感じました。

 

全体を通して、やっぱり許斐先生の作画意図が伝わってくる原画が面白かったです。文系の人間は作者の気持ちが大好きなので。

新テニの世界大会本戦あたりで原稿がアナログからデジタルに切り替わり、切り貼りや修正の跡が見えなくなってしまったのは少し残念な気もしました。もちろん許斐先生が快適に新テニを描いてくださればもうおたくはなんでもいいんですけど、原画として見てて楽しいのは確実にアナログ原稿ですね。

 

以上が私の感じた見所と感想です。

余談なのですが、展示する原画の選定基準も気になりました。

展示されている原画は、波動球や無我の境地のシーンなど絵として見栄えがする派手なもの、手塚跡部戦や過去を凌駕する乾、向こうに入らんかの真田などの名試合・名シーンの抜粋、「デカ過ぎんだろ…」やガニ股で後ろを向く白石などネット上のネタとして人気なシーンの3パターンが多かった気がします。

許斐先生や編集の方が選んでいるのか原画展運営側の方が選んでいるのか不明ですが、おたくのツボをついた上手い選び方をしていると感じました。

原画の上手い選定のおかげで原画そのものを楽しめるだけでなく、順路の最初から最後まで見ていくとテニプリの20年のストーリーを追うことができるようになっています。各コーナーには各校との試合結果とスコアが参照できるパネルが添えられているのもあって、この試合かっこよかったなみたいな感情が呼び起こされつつ、帰ったら単行本もっかい読まなきゃ、早く読みたい、と思わせてくれる素敵な原画展でした。

 

20年以上前に生まれた作品を最近好きになったにもかかわらず、こうしてリアルタイムで現場を楽しめること、歴史が続いていることは本当に幸せだなと思いました。

改めまして、テニプリ20周年おめでとうございます。