激ダサDANCEで凍らせて

ハロプロとテニミュとその他雑記。

テニミュDream Streamはマジで高熱出した時のDream

今年5月にテニミュ全国立海公演が配信されてから0年と5か月と15日、凍結された作品を推してきた。

疫病によってキャストの卒業式でもありシーズンの集大成でもあるドリライ2020が中止になり、テニミュ3rdシーズンは名目上継続してはいるものの公演が実施される希望は失われていた。動いているのはひたすらキャラクターやキャストの誕生日祝いとテニモ更新情報を呟きつづける公式ツイッターだけという植物状態のままテニミュちゃんはなんとか生き続けていたのである。

私は3rdの現場に一度も行けなかった。もしもドリライ2020が日程を改めて開催されることになったら何としてでも行こうと思っていたが、ついにその日は来なかった。ドリライが疫病の影響で中止になってしまったのは本当に残念だが、私個人の気持ちとしてはそのおかげで全立配信を見ることができ、テニミュに出会えたので少し複雑な思いもある。

そうは言っても凍結したテニミュを5ヶ月半好きで居続けたことは相当つらかった。会えなかったキャラクター、キャストの卒業をDream Streamの配信で見届けるってどんな気持ちだろうと想像してみても、なんだか宙ぶらりんな感じがした。テニミュが好きという気持ちは溢れているのに、周りのおたくと違って私には3rdシーズンとの思い出が無かったからだ。

 

だが泣いても喚いても2020年11月15日のDream Stream配信をもってテニミュ3rdシーズンは正式に終わりを迎える。

ファイナルロード配信の前振りトーク等は別として、リアルタイムで3rdのテニミュを観るという経験は私にとって画面越しのドリストが最初で最後となった。

 

気持ちの整理がつかないまま、ついに11月15日の17時がやってきた。

画面が暗くなり、1stシーズンから歌い継がれる名曲《Do Your  Best!》のイントロと共に青学10代目が無観客のTDCステージに登場する。早くも不二役の皆木さんが目に涙を浮かべながら歌っている姿を見て、ああ、きっと私も配信を見て泣いちゃうな、と思った。

 

何かがおかしい、と気づいたのは立海曲の《お前ら…崖っぷちギリギリ》あたりだったと思う。ドリストは実際のステージで踊るシーン、ロケ地で踊るシーン、そしてCG背景と共に踊るシーンとバラエティに富んだ映像を楽しめるのだが、立海の背景のCG合成はかなり面白いことになっているのだ。まず《お前ら…崖っぷちギリギリ》という曲は立海が青学を追い詰めた際に歌われた曲なのに立海メンバーが崖っぷちにいるのがおかしい。これでは俺たち崖っぷちギリギリである。燃えさかる崖、突如キラリと光る真田の眼、アクリルスタンドが踊っているのか?と疑うほどの実在感の無さ、笑う場面ではないはずなのに全てが面白かった。

次の四天宝寺ナンバー《勝ったモン勝ちや》で違和感は確信に変わる。踊る四天宝寺メンバーの背後で通天閣が弾み、お好み焼きが打ち上げられ、タコが飛び散る。完全にウケを狙いに来ていた。

激ダサトンチキ映像が狂おしい程好きな私は大阪城がバインバイン弾むたびに大喜びしながら見ていたが、3rdシーズンをリアルタイムで長く追いかけ続けていたファンの皆さんはシーズンのラストがこんな感じで本当に大丈夫なのだろうか。先月配信されたドリライ2018とのギャップに驚きを隠せない。

 

更に衝撃的だったのが四天宝寺ラブルスが歌う《ピンキッシュ・ボーイズ》である。原色のサイケデリックな背景とともに踊るラブルス、そしてラブルスの後ろで試合を始める銀さんとみんな大好き冷上剛先輩。ラブルスが歌う間中、飛ぶわ飛ぶわピンクのハート。この既視感と00年代初頭感は何だろうと頭を抱えていたのだが、映像が終わってからかつて少女たちから絶大な支持を得たシャンプー、ティセラのCMの世界観に限りなく近いと気づいた。というか金色小春と言えば桃色片想い桃色片想いと言えば松浦亜弥が出演したティセラのCMである。映像制作の方もきっとその辺を意識していると思うのだが、どうでしょう。ともかく、この映像を作れてしまう天才が2020年に存在しているのが怖い。怖すぎる。

 

この後も子供の頃風邪ひいて高熱出した時に見た楽しい夢みたいな映像が延々と続く。ドリライが中止になり、キャストさんもファンもみんな悲しかったはずなのに、キャラクターを背負ったキャストさんたちは皆楽しそうで、かっこよくて、死ぬほど面白かった。泣いてしまう覚悟でドリストを見始めたのに、気づけばパソコンの前でひとり涙が出るほど笑っていた。

そんな中、唯一跡部の《肌を刺す嵐》だけは完成度の高いMVのような体裁を保っていた。いや、跡部様のお衣装も雨の降る屋上でテニスラケットを持つシチュエーションも少しずつおかしいのだが、《ピンキッシュ・ボーイズ》を観た後の跡部様は驚くほどに高貴でまともだった。

 

《肌を刺す嵐》の次に歌われた青学10代目の卒業バラード、《THANK YOU & GOOD-BYE》では流石に笑いを取りには来なかったが、一つ意外な点があった。歴代の卒業バラードは、青学テニス部の視点からの歌詞にキャストの心情を重ねて歌う二重写しの形が基本だった。しかし、《THANK YOU & GOOD-BYE》では「結果より稽古が大事 稽古次第で本番は決まる」というフレーズが登場する。今までならば「練習」などの言葉を使い、テニスの練習とも舞台の練習とも取れる作詞をするのがテニミュの伝統だったように思う。今回の卒業バラードで役者としての彼らを直接的に表す「稽古」という歌詞が書かれたのは、テニミュのメタ表現の歴史を変える出来事ではないだろうか。

歌詞には少し驚かされたが、青学10代目の綺麗なハーモニーにはやはり感動した。テニプリのストーリーもテニミュの歴史も知らない状態でテニミュを布教され全立配信を見た時には、リョーマと幸村の試合の決着が着いてから幕下りまでなげぇよ、急に卒業式すな、と思っていた。でもテニミュを好きになった今になって聴く卒業バラードは当時と全く聴こえ方が違う。キャストさんの想いとこれまでの歴史を感じながら、10代目のみんなが舞台に立ってくれて良かったと心から思った。

 

トンチキすぎる映像の数々と青学10代目の涙の別れに理解が追いつかないまま本編はフィナーレに差し掛かった。本編は学校ごとのメドレーで締め括られる。氷帝全員で踊るメドレー曲《STILL HOT IN MY HEART》は遠近感やフォーメーションなどに違和感もなく9人が揃っているが、卒業証書授与のシーンでは実は全員揃わなかったメンバーが合成映像で集められていたことが発覚した。散々合成センスのヤバさに爆笑させてもらったが、ドリストはちゃんと凄腕のスタッフさんが心を込めて作ってくれた映像なのだ。

滝さんと岳人は卒業シーンを見る限り別日の撮影だったようだが、2人が並んでスティホを踊るところはそれぞれの内面がよく表れていて好きなシーンなのでアーカイブで何回も再生した。ゆっくり両手を上にあげるだけのシンプルな振り付けの箇所だけど、滝さんは指を綺麗に揃えて、これまでの氷帝に想いを馳せるような表情で斜め上を見つめながら手を上げる。そして岳人は両手を元気良くパーに開き、笑顔で真正面のカメラを見つめながら手を上げる。同じ振り付けを与えられていてもこういう細かい踊り方にキャラクターの個性が表れるのが2.5次元ミュージカルの面白いところで、たとえ別撮りであっても指先にまで気を遣ってキャラクターらしさを表現しているキャストさん一人一人の想いが伝わってくる。

やっぱりドリスト、良い企画だよ。

 

そうしてメドレーも終わり、よくわからないうちにドリスト本編は終わった。終わったのだ。あれほど恋焦がれた強くて圧倒的で美しいサー立も、よくわからない崖に合成され終わりを迎えたのだ。

だが、それでこそ私が好きになったトンチキ作品、ミュージカル『テニスの王子様』だ。もしもしんみりとした終わり方をしておたくを本気で泣かせにかかってきていたら、私は永遠に成仏できなかった。

トンチキ合成映像で思いっきり笑わせてくれたから、3rdに出会えて良かったしきっと次の4thも涙が出るほど楽しいんだって思える。

 

3rdシーズンを駆け抜けたキャストの皆さん、ご卒業おめでとうございます。テニミュに出会わせてくれて、ありがとう。

皆さんが繋いでくれたテニミュをこれからたくさん応援したいと思います。